ソラリゼーションとは
ソラリゼーションというのは撮影後のフィルムの現像が途中の段階で一瞬だけ光を当てて、さらに現像を続行することでできる効果です。(より厳密に言うときには、これを 「Sabatier Effect / サバティエ効果」といい、もっと前の写真材料での過剰露出によるソラリゼーションと区別するようです。) なぜこの効果が発生するのかについての定番の参考文献は 【 Solarization Demystified 】。要するにポジとネガを微妙に重ねたような効果のことのようです。
これは銀塩写真では高等技術ですが、デジタルな世界ではこれに近い結果を非常に簡単に得ることができます。どの明るさのあたりを、どのくらい(明暗の)どっち方向にいじるか、というのは、Painter の「Correct Colors / 色補正」にあたる機能を使えば、Photoshop、PaintShop Pro、その他どんなツールでも共通です。ウェブ上の解説ページでは、この「ポジとネガを重ねたような」というフレーズを手がかりに、いろいろ違う方法が紹介されています。
色補正でカーブを編集
上のリンクの論文の内容と実例画像を参考にして、このへんじゃないかな、と考えたのがこんなカーブ。このカーブは山をキツくするために「色補正」の手法(左下のドロップダウンリストから選択)の「フリーハンド」を選んで作成しました。この設定で実行したものを記録したスクリプトは
このカーブを適用した結果がこれ。左が元の画像、右が結果です。白に近い部分がネガ画像になり、ポジとネガの境界のあたりは、カーブがきついので、狭い範囲で大きく明るさや色が変化しています。
(元画像 >> 結果)
色が大きく変化するのは、RGB のそれぞれについて明るい部分が反転し、それが合成された結果が色になるからです。
もう少し柔らかいカーブを「色補正」の「数値」を使って設定してみたのがこれ。このカーブは基準線である斜めの線の上(明るくなる)と下(暗くなる)になる面積が近いので、適用しても画像全体の明るさがあまり変わりません。
このカーブは、「Advanced / 数値」ダイアログで、RGB すべてについて左から順に、「0, 5, 28, 3, -100」と入力して作ったものです。実行スクリプトのテキストも
このカーブを上と同じ画像に適用すると、こんな感じ。
(元画像 >> 結果)
変化がおとなしいので、さらにその結果に同じカーブを重ねて適用。(スクリプトとして保存しておいて実行すれば、同じ設定であとから再利用できます。)
( 2 回目 >> 3 回目)
同じく「Advanced / 数値」ダイアログを使って、山が中央にくるカーブを作成すると、ネガ反転する明るさの境界が下がり、また、明るさが中程度のピクセルも、より大きく影響を受けるようになります。この設定は、RGB すべてについて左から順に、「0, 10, 40, -40, -100」です。実行スクリプトのテキストは
(元画像 >> 結果)
色補正いろいろ
デジタルな処理では現実のルールにこだわる必要はないので、「色補正」のカーブを自由に変更して実験してみてください。山が 2 つあるカーブ、カーブが途中で切れている、など、なんでもありです(そうなってくると、「ソラリゼーション」という呼びかたは適切ではなくなってきますが)。「フリーハンド」でテキトーに描くのが気楽です。設定を保存したい場合は、「色補正」ダイアログを開く前のところから「スクリプトを記録」して、適用した時点で「停止」、その後保存(気に入らないときは、保存をキャンセル)します。
「色補正」では RGB の色のそれぞれについて効果を適用することができます。ひとつの色だけについてカーブを変更したり、それぞれの色に違うカーブを適用したりすると、全体の色を変更しつつソラリゼーションもかかるような効果なども作れます。
Painter の「Correct Colors / 色補正」は Photoshop の「Curves / カーブ」に相当します。RGB と Master のカーブが常に共通のグラフに同時に表示されているあたり、Painter のインターフェイスのほうがわかりやすいと思いますが、Photoshop (Ver. 7) のほうにも設定を個別に保存できるとか、フリーハンドの曲線を「なめらかに」するボタンがあるとか、ちょっと欲しい機能もついてます。
(Last Modified: 2004/06/30)