Painter 12 でユーザーインタフェースが大幅に変更になった影響で、「照明効果」のダイアログから設定の保存、書き出し、読み込みの機能が削除されてしまいました。以前のバージョンで保存した設定を Painter 12 に持ってくることは、ライブラリ読み込み経由ではできなくなったわけです。
いっぽう、Painter の「効果」は基本的にスクリプトに設定を含めて保存されます。Painter 12 でも使いたい照明効果の設定は、旧バージョンでこの設定を使った照明効果の適用をスクリプトとして保存し、このスクリプトを Painter 12 に読み込むことで、持ってくることができます。
Painter 11 までのバージョンでも、照明効果の設定をスクリプトを使って保存すると、照明効果のダイアログを開かずにカスタムパレットからボタンひとつで効果をかけることができて便利です。
照明効果のダイアログ
Painter 11 日本語版のダイアログはこのようになっています。「照明効果」は Painter 2 で搭載されましたが、そのときから基本的に変化がありません。このダイアログで左下にある、「照明ライブラリの編集」、「ライブラリ」、「保存」のボタンは Painter 12 ではなくなりました。
照明効果の設定
光源
光源の設定は左上のプレビュー窓でおこないます。上のプレビューで右寄りにひとつ見えるアイコンが光源のアイコンです。このアイコンの大きい円をつかんでドラッグすることで、キャンバスに当たる光の中心の位置を変えることができます。(光源そのものの位置ではないことに注意。)
プレビュー内のすでにある光源アイコン以外をクリックすると光源の追加ができます。ダイアログのプリセットの左から 3 つめに見えるように、複数の違う色の光源を設定することができます。意図しない場所に光源を追加してしまったときは、それにフォーカスがある状態で Backspace あるいは Delete キーを押すことで消去できます。
光源の方向(キャンバスの真上から見た方向)は、アイコンの小さい円をつかんでドラッグすることで調節できます。
ダイアログ右側の設定は、それぞれの光源について個別におこないます(露光の量、環境光の量、環境光の色は共通)。設定対象の光源を切り替えるには、目的の光源アイコンをクリックします。
照明の色
それぞれの光源の色、および、環境光の色は、ダイアログの四角い表示をクリックして変更できます。
スライダ設定
下の図で、光源の位置を Light Source、キャンバスに当たる光の束の中心を Light Center、光の束の幅を Spread、キャンバスに対する光源の角度を Elevation と表示しています。
Light Center とあるのが光源アイコンの大きい円の位置です。アイコンの小さいほうの円は、光源の方向のみを示し、その延長上に光源(Light Source)があることになります。
- 明度 / Brightness ― それぞれの光源の明るさ。
- 距離 / Distance ― 光源から光の中心までの距離(上の図で光の束の中心の赤い線)。
- 照射角度 / Elevation ― 光源と光の中心を結んだ線と、キャンバス面との角度
- 広がり / Spread ― 光の束がどのくらい横に広がるか。
- 露光 / Exposure ― 全体の明るさの度合い。照明や環境光の効果をかけた上で、さらに全体の明るさを調節する。
- 環境光 / Ambient ― スポットライトではない周辺の明るさによる影響。環境光が 0 のとき、真っ暗ななかでスポットライトを当てた部分だけに光が当たる状態になる。
照明効果の設定をスクリプトとして保存
スクリプトの保存についての概要は Painter のスクリプト機能 を参照してください。「照明効果」の設定を保存するには、次の手順で。
- スクリプトパネルのメニューから「スクリプトオプション」を選択、「Record Initial State / 開始時の環境を記録」のチェックマークをはずしておく。こうすることでスクリプト記録時に選択されていた用紙テクスチャ、パターン、その他いろいろの条件を無視して、汎用性の高いスクリプトになります。
- 「照明効果」を適用する直前まで作業をすすめる。
- ここでスクリプトの記録を開始する(スクリプトパネルの ● をクリック)。
- メニューから「効果」-「表面効果」-「照明の適用」を選択して、照明効果のダイアログを表示。プレビューを見ながら照明を調節する。調整しおわったら「OK」をクリックして効果を適用。
- この時点でスクリプトの記録を停止する(スクリプトパネルの ■ をクリック)。
- 保存したスクリプトに名前をつけて保存するように要求されるので、名前を入力して「OK」で保存。結果に不満があるときはここで「キャンセル」を選べば、スクリプトは保存されず破棄されます。
- スクリプトパネルに保存したスクリプトが追加されたのを確認。
要するに、「効果」をスクリプトに記録するときは、メニューからその「効果」を呼び出す直前からスクリプトの記録を始め、効果のダイアログで「OK」をクリックして効果の適用が完了した時点で記録を停止します。
スクリプトデータの内容
次の式は、「照明効果」のプリセットの先頭にある「グラデュアル(斜)/ Gradual Diagonal」を適用するときにスクリプトを記録して、それをエクスポートした結果の、照明効果にかかわる部分だけの抜き書きです。
apply_lighting exposure 0.84 ambient red 0.23 green 0.23 blue 0.23 lights 1
light x 0.82 y 0.60 dist 1.75 vx 0.07 vy 0.06 vz 1.00 spread 0.48 brightness 1.05 color red 255 green 255 blue 255
end_lighting
上の式の要素は次のとおり。
- apply_lighting ― 照明効果コマンドの開始。
- exposure ― スライダの「露光 / Exposure」の数値。0.0 から 2.0 の幅。1.0 が通常の状態。
- ambient ― 「環境光 / Ambient」の量を RGB 要素で表記。環境光の色の設定と、環境光の量の設定の兼ね合い。環境光の量がスライダ右端(1.0)のとき、環境光の色に設定した色がそのままここに記述される。RGB 要素はそれぞれ 255 でスクリプトの 1.0 になる。環境光の色の RGB 要素をそれぞれ 0.0 から 1.0 の間で表記したとき、これに環境光の量のスライダの数値をかければ、ここに記述される数値になるはず。
上のサンプルでは、環境光は白(RGB はそれぞれ 1.0)で、そこに観光光の量のスライダ値 0.23 を掛けたものになっている。 - lights / 光源数 ― 光源の数をまず指定し、光源が複数ある場合はそれぞれについて light で始まる行を記述する。光源の数が 0 で、環境光のみ、という設定も可。
- light 設定(それぞれの光源について)
- x および y ― プレビュー窓内における、光の中心の位置。左上が 0、右下が 1。
- dist ― 光源の「距離 / Distance」のスライダ設定の数値。0.1 から 10.0 の範囲。上の図で光の中心と光源を結ぶ赤い線の長さ。(ベースとなる数値、すなわち dist=1 は、プレビュー窓の辺の半分の長さらしい。)
- vx, vy, vz ― 光の中心を始点にしたとき、光源の位置が 3D でどの方向になるかを指定。下の図のように、始点から右に光源があれば vx がプラスの数値、左ならマイナスの数値、プレビュー窓で下(手前)なら vy がプラスの数値、奥ならマイナスの数値、光源のキャンバスからの垂直距離が vz。この数値の兼ね合いで「照射角度 / Elevation」が決まる。
立ち上がった直角三角形の斜辺の長さが、dist の数値となり、これを 1 としたときの割合。vx と vy は -1 から 1 の間、vz は 0 から 1 の間の数値となる。上のスクリプトの例では vz が 1 となっているが、これはエクスポート時に桁数が丸められたためで、本来の数値(スクリプト保存後に、「スクリプトの編集」で確認できる)は vx=0.072700、vy=0.06515、vz=0.995455。直立に近い状態。 - spread ― 光源の「広がり / Spread」のスライダ設定の 1 度から 180 度の範囲の数値 を 0.001 から 3.14 の範囲の数値に変換して記述。
- brightness ― 光源の明るさ。0 から 2 の範囲。
- color ― 光源の色を RGB 指定。それぞれ 0 から 255 の範囲。
- end_lighting ― 照明効果コマンドの終了。
以上、推測で書いています。Painter のマニュアルは「照明効果」の詳細設定については、非常にわかりにくくなっています(Painter 2 ですでに不明瞭な記述になっており、それ以後まったく改善されず)。プレビューを見ながら設定すればなんとかなるので、あまり問題ではないのですが、スクリプト内容を読んだり、エクスポートしてから手直しして再読み込みしたりするときには、少しでも論理的な指標があったほうがよいと思って、動作から分析してみました。
Painter 12 のスクリプト編集ダイアログ
Painter 12 はスクリプトの編集ダイアログの形式が変わり、コマンドのコピーやペーストができなくなっていますが、数値の調整は以前と同じようにできます。上でエクスポートしたのと同じ設定で「照明効果」を記録したものを、編集画面で開くとこのようになります。
スクリプトパネルから開く編集画面での項目名と、エクスポートしたテキストファイルの記述での対応は次のようになるようです。
- Direction X = 照射角度 X = vx
- Direction Y = 照射角度 Y = vy
- Direction Z = 照射角度 Z = vz
以上、エクスポートした照明効果のスクリプトを編集してみよう、というときのための覚書でした。
(2011/06/19 - 2011/06/20)